経年変化(エイジング)とは?劣化との違いやシルバー・真鍮の育て方を職人が解説
ジュエリーブランド「WAS KNOT WAS」代表の越智です。
兵庫県明石市のアトリエを拠点に、デザイナーと職人の視点を交え、細部にこだわって製作したジュエリー・アクセサリーの魅力を発信しています。
大切に身につけているリングやバングルについた細かな傷や、最初と比べて少しずつ濃くなってきた金属の色合い。
「もしかして古くなって、もう色は戻らない?」
「傷んでしまったのでは?」と思ったことはありませんか?実はそれ、素材が傷んだのではなく、あなたと共に時間を過ごしてきた証である「経年変化(エイジング)」です。
今回は、経年変化と経年劣化の決定的な違い、シルバーや真鍮といった代表的な素材ごとの変化の仕組み、そしてご自宅でできる簡単なお手入れ方法まで、職人の視点からわかりやすく解説いたします。
経年変化(エイジング)とは?「経年劣化」との決定的な違い
「経年変化」と「経年劣化」。言葉は似ていますが、その意味合いは大きく異なります。
時間の経過とともに味わいが増す「経年変化」
経年変化とは、年月が経つにつれて素材の色や質感が変化していく現象のことです。
デニムや革製品、木製家具のように、使い込むほどに風合いや深みが増し、自分だけの愛着が深まる「プラスの変化」を指します。
機能や強度が損なわれる「経年劣化」
一方、経年劣化とは、時間が経つことで素材の強度が落ちたり、ひび割れたりして製品としての機能や価値が失われていく「マイナスの変化」のことです。
ジュエリーにおける経年変化の美しさ
貴金属や真鍮で作られたジュエリーの場合、日常の動作で刻まれる細かな傷が光を穏やかに反射するようになったり、凹凸のあるデザインの溝部分に深みが出て立体感が際立ったりします。
これらは劣化ではなく、共に過ごした時間の記憶として楽しめる、ジュエリーならではの魅力です。
素材によって異なる経年変化の仕組み
ジュエリーに使われる金属によって、変化の仕組みや風合いは異なります。ここでは代表的な2つの素材をご紹介します。
シルバー925/950:「硫化」による深みと「育て直せる」安心感
シルバーが黒ずんでくるのは、錆び(酸化)ではありません。空気中や汗に含まれるごく微量な硫黄成分と銀が結びつく「硫化(りゅうか)」という現象です。
表面にごく薄い膜ができるだけなので、金属の内部構造そのものが劣化することはありません。アンティークのような渋い黒ずみをそのまま育てるのも魅力的ですし、磨き直すことでいつでも新品のような輝きに戻せるのが、シルバーならではの魅力です。
真鍮(ブラス):クラシカルで温かみのある酸化と「緑青」
銅と亜鉛の合金である真鍮(ブラス)は、空気に触れることで表面が「酸化」し、徐々にシックな色味へと変化していきます。
汗や水分がついたまま放置すると「緑青(ろくしょう)」と呼ばれる緑色の錆が出ることがあります。見た目で驚かれるかもしれませんが、緑青は人体には無害です。適切なお手入れできれいに落とすことができます。
自宅でできる簡単なお手入れと保管方法
お気に入りのジュエリーと長く心地よく付き合うために、ご自宅でできるケアと保管のポイントを押さえておきましょう。
日常の基本ケア
どの素材であっても着用後は、乾いた柔らかい布(メガネ拭きなど)で汗や皮脂を軽く拭き取る。これだけで硫化や酸化のスピードを大幅に遅らせることができます。日常の手洗いで汗や皮脂が流れるだけでも、変色の予防に一定の効果があります。
元の輝きに戻す「リセット」のお手入れ
- シルバー
市販のシルバー専用研磨クロスで優しく一方向に拭き取るか、重曹に少量の水を加えてペースト状にし、指で優しく撫でるように磨いて水洗いします。 - 真鍮
ご家庭にある「お酢」に2〜3分浸してから水で洗い流し、水分をしっかり拭き取ると驚くほど輝きが戻ります。また、重曹ペーストを使って磨くことで、お好みのツヤ感に調整しながら仕上げることも可能です。
変色を遅らせる正しい保管方法
長期間着用しない場合は、汗や水分を拭き取った後、ジップ付きの袋に入れて空気を抜いて保管します。乾燥剤を一緒に入れておくと、さらに変色を防げます。
避けるべきNGお手入れ
- 硫黄成分を含む温泉・入浴剤の使用
一気に激しく黒ずんでしまいます。 - 歯磨き粉での研磨
研磨剤の粒子が粗く、余計な傷が入る原因になります。 - 天然石がついたジュエリーの薬剤漬け・超音波洗浄
石が傷んだり脱色したりするリスクがあります。
「磨き直す」か「育てていく」か。
ジュエリーに刻まれた小さな傷や色調の変化は、暮らしや仕草とともに重なった時間の記録です。
常に新品に近い状態で身につける美しさもあれば、あえて磨かずに落ち着いたアンティークな風合いを楽しむ美しさもあります。どちらが正しいということはありません。
大切なのは、「今の自分の感覚に合っているかどうか」。磨いて新品の頃に戻すことも、そのまま育てることも自由に選べるのが、本物の金属で作られたジュエリーの良さです。
From the WAS KNOT WAS Atelier
WAS KNOT WASでは、お仕立てしたジュエリーがお客様の毎日に寄り添い、時間とともに世界にひとつだけの表情へ育っていくプロセスを何より大切にしています。
「自分でお手入れするのが不安」「細かな傷を目立たなくして、もう一度新品仕上げ(磨き直し)をしてほしい」といったご要望がございましたら、ご相談ください。職人が一点一点丁寧にメンテナンスや調整を承ります。
Written by Hideo Ochi(WAS KNOT WAS Designer / Craftsman)





